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アフリカ協会主催 オンライン対談シリーズ Proudly from Africa〜アフリカのロールモデルの話を聞く〜第3回
2021年8月26日(木)20:00~21:00 、アフリカ協会Facebook公式アカウント(https://www.facebook.com/africasociety.or.jp)にて、“分断を乗り越えて〜My Blood Divides and Unites〜”について話を聞くオンライン対談イベントを開催しました。
南アフリカ出身のJesmane Boggenpoelは、南アフリカの上場企業各社のボードメンバーを務め、公認会計士としても世界経済フォーラムのヤンググローバルリーダーとしても幅広く活躍してきた方。アパルトヘイト時代に、白人や黒人に加えて設けられた「カラード(混血)」の家族として生まれ育った彼女は、幼い頃から自身のルーツに真剣に向き合ってきました。著書『My Blood Divides and Unites』では、彼女自身や家族の様々な経験のみならず、世界中の友人達から聞いてきた分断などと向き合う中で、どのように互いを理解し認め合うことができるのかを模索しています。そんな彼女が”Black Lives Matter(BLM)”や現在の南アフリカの情勢に、どんな想いを持っているのか、お話を伺いました。
登壇者
【『My Blood Divides and Unites』著者】Jesmane Boggenpoel(ジェスメイン)
【ナビゲーター兼通訳】株式会社SKYAH/ Proudly from Africa代表 原ゆかり
【テクニカルサポート】志賀真希
Jesmaneの出自“カラード(混血)”について
南アフリカでは1991年まで続いたアパルトヘイト時代に、法律上の上の制度として、白人や黒人、インド系に加えて、「カラード(混血、mixes races)」という分類が設けられました。歴史的に、カラードの起源は大航海時代の1600年代に遡ります。オランダやイギリスから入植してきた男性たちを中心に、コイサン族を中心とする原住の人々との間に生まれた子どもたちがその起源です。さらには、インドネシアやインド、スリランカをはじめ、アジア諸国と交易を拡大していた東インド会社が、南アフリカに奴隷として連れ帰った人々もまたそのルーツを形成していく存在となっていきます。多くの血が繋がった結果生み出されたコミュニティーが、カラードです。この歴史は、長い間南アフリカの中では恥ずべきこととして認識されてきた側面があり、学校の教科書にその歴史が記されることもありませんでした。レイプによって生まれた子どもが少なからず存在することも、その一因かもしれません。カラードの歴史と深く結びつく奴隷や奴隷収容所の存在については、南アフリカ人でも知らない人が大勢います。私にとって自分のルーツが知られていないわからないというのはミステリー以外の何者でもなく、そこから好奇心が芽生え、自分が何者なのかを探す旅が始まったのです。
遺伝子検査の結果分かった、自分の中の矛盾する血
2016年、世界経済フォーラムのアフリカ担当としてスイスに住んでいた頃、アメリカのスタートアップの遺伝子検査を受けてみました。結果、自分の血は、38.4%がヨーロッパ(うち6.2%はユダヤ)、28.6%がアフリカ、25%がインドをはじめとする南アジア、6.9%が漢民族含む東アジア由来だということがわかりました。
著書『My Blood Divides and Unites』の表紙の世界地図が、血球で構成されているのは、自分自身の血が世界中に由来するものであることを表したかったから。世界が自分の中にあるという思いを、自分のルーツを探る中で抱くようになったのです。
自分の血の由来について、人種以外の側面も辿ってみると、さらに混乱する事実がわかりました。入植者・植民支配された側の人々、奴隷を虐げた人・奴隷、白人と黒人、ドイツ人・ユダヤ人…歴史的に対峙してきた存在が自分の中に存在することが分かったのです。その矛盾を美しいモザイクとして受け容れ、全ての祖先を抱きしめ、人々を抑圧してきた許しがたいと思ってきた存在と重なった祖先を許すというプロセスが必要でした。
例えば日本は比較的均一性の高い国かもしれないですが、それでも様々な違いや分断を経験してきていると思います。自分自身のルーツや世界中の友人の経験を探求をすることを経て得てきた数多くの学びは、世界中の人々・社会にとって参考になる部分があるのではと思っています。
Power of Story Telling/ 語りの力
自分自身のルーツ探求の結果判明した様々な矛盾や対立を乗り越えてきた方法の中で、特に役立ったのが“Power of Story Telling(語りの力)です。人との関わりの中で自分のことを話す時、私たちは慎重に単語を選び、自分の世界観が伝わるように言葉を紡ぎます。一人一人が語る言葉こそが、互いの認識を形成し、関係性を構築していくのです。本の中では、自分自身のストーリーだけではなく、世界中の友人たちから聞かせてもらったストーリーも記しています。互いの心の内を言葉にしてさらけ出した時、私たちは相手に対してある意味弱みを晒すことになるわけですが、それも、より共感を呼ぶ形で人間関係を築いていくために重要な役割を果たすと思うのです。
企業や団体などから、どうすれば社員やメンバーの仲をより深めることができるかという相談を受ける際には、忙しい中でもなんとか時間と空間を捻出して、一人一人が自分自身の話をできるスペースを作り出すことの大切さを伝えるようにしています。日本の人々は本当に勤勉でハードワーカーであることは重々承知しているのですが、それでもだからこそ意識的に、仕事だけを成し遂げるための関係ではなく、一人一人が個性ある人間として互いに自己開示しながら関わり合うような関係を築くための仕掛けが必要だと思います。
Power of Reframing/ 額装しなおす力
語りのチカラと並んで、前に踏み出す勇気をくれたのが、”Power of reframing(額装しなおす力)”です。数年前、奴隷であった祖先が収容されていたであろうケープタウンの奴隷収容施設を訪れたことがあります。その場に足を踏み入れ、その残酷さに身がすくみ、動けなくなりました。長い時間をかけて辛く苦しい航海を耐え、その先でもこんなに厳しい環境に立ち向かわなければならなかったのかと、心が砕けました。スタックしてしまった自分をどうにかしてそこから抜け出させなければと思った時に、意識的に、その祖先を別の視点から見つめてみることにしたのです。まず、奴隷としてこの場所で耐え生き抜いたからこそ、今の自分に至るまで血が続いているわけであり、彼らのレジリエンス(しなやかさ・跳ね返す力)は誇るべきであるということに気がつきました。彼らはただただ犠牲者としてかわいそうなだけの存在ではないと思ったのです。祖先のルーツであるインドやインドネシアに思いを馳せてみると、そこには何世紀にもわたる文明と王朝の歴史があり、それもまた祖先たちを誇り高き存在として捉え直すことにつながる事実でした。奴隷であったという事実は祖先の人生のごく一部であり、それだけが彼らの人生を決めてしまうわけではないと考え直したのです。
Empathy/ エンパシー〜分断を乗り越えて
自分と異質な存在に対峙する時、守りに入ろうとしたり攻撃的になることは自然なことかもしれません。それは理解できます。ですが、相手の立場に立って向き合うことができた時、お互いの目を見て話し合うことができた時、その対立を私たちは乗り越える糸口を見出せる気がします。エンパシーは共感という意味ですが、お互いの脆弱さを開示しあって共通点を探っていくことでもあります。
日本をはじめとするアジアの人々についても、#stopasianhate 運動が加速化する中で、アジア系の人々に対する襲撃や誹謗中傷に対する憤慨や、対峙するための団結の様子が見て取れます。新型コロナの感染の起源をめぐってアジア人が攻撃の標的となったことも、多くの人々の怒りに火をつけました。アジア人に対する攻撃の背景には、人々の無知があるのだと思います。科学的な根拠に基づかない言いがかりや誤解を一つ一つ解きほぐしていきながら、なぜ#stopasianhateなのかということを、人々とともに冷静に訴えかけていく必要があるのだと思います。
日本の人々と仕事を共にする中で或は友人関係を築く中で感じるのは、皆さんがとても敬意を持って相手に接するということです。相手を傷つけないように配慮しながら言葉を選んだり、時に感情や思いを伏せたりすることは、それはそれで素晴らしい側面もある一方で、人種などの難しい問題については時に声を大にしてほしいと思うこともあります。衝突や議論を避けようとするがあまり、目の前の問題に切り込むことから自分を遠ざけ、問題を後回しにしたりその場を濁したり、或は無かったこととして通り過ぎてしまうことはないでしょうか。正直に勇気を持って自分の意見を述べることは、その良さと必ずしも矛盾するものではないと思います。時には手厳しい議論も経なければ、違いや分断を乗り越えて、前に進むことはできないと思うのです。
オンラインイベント録画
イベントに参加くださった皆様、開催に当たってご協力くださいました皆様ありがとうございました。
今後も2ヶ月に一度のペースでアフリカ協会様の企画として本イベントを開催してまいります。次回イベントについても詳細決まり次第ご案内させていただきます。ライブ配信は、アフリカ協会公式Facebookにて配信いたしますので、ぜひフォローください。
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