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アフリカ協会主催 オンライン対談シリーズ Proudly from Africa〜アフリカのロールモデルの話を聞く〜第4回
2021年11月25日(木)20:00~21:00 、アフリカ協会Facebook公式アカウント(https://www.facebook.com/africasociety.or.jp)にて、“アートを通して届けたい想い”について話を聞くオンライン対談イベントを開催しました。
アフリカに流れ着く古着や廃棄素材から色鮮やかな作品を生み出し、アートを通じてその背景に潜む社会課題について発信し続けるブランド”the Slum Studio(ザ・スラムスタジオ)”を手がけるマルチメディアアーティスト、Sel Kofiga(セル・コフィガ)。 セルはその他にも、写真や絵画、音声ドキュメントなど様々なメディアを通じて、自身の問題意識や考え、想いを世界に届けようとしています。そんな彼が今、アーティストとして世の中に伝えたい事は何なのか、作品を見せていただきながらお話を伺いました。
登壇者
【ゲスト】ガーナ出身マルチメディアアーティストSel Kofiga
【ナビゲーター兼通訳】株式会社SKYAH/ Proudly from Africa代表 原ゆかり
【テクニカルサポート】志賀真希
服を考えることは未来を考えること
“古着の不都合な真実”をご存知でしようか。発展途上国へ古着を寄付している団体は世界中に多数存在し、実際に古着を寄付したことがある方もいるかもしれません。良かれと思って行っているその行動が、実は深刻な問題となっている場合があります。対談はセルからの私たち消費者へのメッセージで始まりました。「ファストファッションを買っている人は、その服が数年後、数十年後どうなるのかを一度立ち返って想像するべき」という言葉。どれほどの人が自分の購入する服の未来を長期的に考えているでしょうか。
The Slum Studio〜身の回りから世界へ〜
The Slum Studioは、アートを通して社会課題を発信しています。彼の活動はただの創作ではなく、自分の所属するコミュニティと社会課題が交差する部分に生じる表現だと説明します。活動の発端は、“politics of clothing”、つまり洋服、ファッション業界における政治的な思惑や課題に気がついたことでした。自分、周辺の人々、コミュニティ、地球にどんな影響を与えているのかに関心を持ちながら調べを進める中で、特化したいと考えた課題が古着でした。どこからどんな経緯で古着が流入してくるのか、ガーナに到着した古着はどんな末路を辿るのかということを研究しています。この研究は古着のバリューチェーンの全てを分解して、関わる人々の話を聞くところから始まります。その過程で人々がどういう思いを持って古着の取引に向き合っているのか、声を一つ一つ聞きながら、自分のアートにどう反映させられるかを考えていきます。研究を通して明らかになったことの一つは、ガーナには1週間で1500万着の古着が流入し、そのうち6~7割が着られることなく埋立地に埋められているという事実でした。質が悪かったり、カビがはえてしまっているものは着用できる状態にはないからです。彼はこの現状を知り、落ち込むだけでなく、アートで伝えることは出来ないかと試行錯誤した結果、廃棄素材や古着を再生した洋服を作り始めました。これがThe Slum Studioの起源です。
アートの力
セルは、社会問題を克服することを目指して、アートという手段を使ってメッセージを発信しています。セルが作る作品は、“ビジュアルダイアログ”を意識して制作されており、そのカラフルな色味やインパクトのある描写やデザインは視覚的に目を捉え、人々の関心を引きます。そうすることで、アートを通じて人々との会話が始まるとセルは語ります。The Slum Studioの作品に描かれている一つ一つのシンボルには意味があり、その種類は60以上。
例えば目の絵には、目利きの意味があります。人は大量の古着の中から購入する商品を選ぶ際、いいものを見極めようとします。この見極めが商売を大きく左右するということで目がシンボルとして描かれています。また、傘のシンボルは、大きなパラソルに古着をかけて売る様子を表しています。ガーナではこの売り方が主流です。
そしてセルは、The Slum StudioのInstagramに、その作品の背景を物語る写真も数多く投稿しています。古着市場は人々の生活が深く根付いた場所であり、生活に必要な食料はじめ様々なものが得られます。彼はマーケットで見聞きすることをメモに取り、発想を膨らませ、作品に投影していきます。また、”discomfort(不快感)”を人々に頂かせるような社会課題でも、アートを通じて、”comfort(心地良さ)”を覚えさせるような表現に転換させることができる、という想いにも言及がありました。
コロナ禍で見た夢を絵画に〜UNTITLED〜
2020年前半、世界中がコロナ禍の不安に包まれる中、セル自身も鬱積した気持ちになり、芸術家として創作が進まなくなる”Creative block(クリエイティブ・ブロック、創作におけるスランプ)”に直面しました。ガーナがロックダウンされる直前に、もう一つの拠点先であるコートジボワールのアビジャンから帰国したセルは、コートジボワールの大事な人々に会えなくなるストレスや先行きの見えない不確実性に押しつぶされそうになったといいます。そんな中で次第に繰り返し繰り返し見るようになった夢を絵画に起こそうと思い出来上がったのが、このシリーズです。動きを制限され、どこにも行き場がない様子や、鬱々とした気持ちや不安を、黒や深い青といった色味や屋内にとどまる人物画に反映しています。シリーズのタイトルを“UNTITLED(無題)”としたのは、未曾有のコロナ禍で経験することに題目をつけることはできないと考えたからだそうです。
繋がりを大切に
セルが現在手掛けている最中の絵画シリーズに、“FAMILY PORTRAIT”というタイトルのものがあります。セルが生まれ育った環境では、ファミリーが広い概念で捉えられており、生物学的繋がりや血縁だけでなく、友人やコミュニティなどのもっと広い概念がファミリーを形成するという想いから制作されています。協力すること、心を通わせることなど、ファミリーとしての絆や愛情を絵に起こしたそうです。この絵からも、セルが繋がりやコミュニティを大切にしていることが伝わります。また、絵だけでなく、話の中でも「コミュニティ」「関わり」という言葉が多く出てきました。セルが周りの人々やコミュニティに愛着を持ち、大切にしていることが感じられる対談でした。
“Creating is healing“
「創造することは、癒しである」活動を通して辛い社会問題と直面する中、目を背けずに取り組んでいく原動力について質問を受けたことに対して、セルが語った言葉です。社会問題は色々なものが複雑に絡んだ結果だと彼は考えています。自分に見えている側面はごく一部で、表現できるのも限られた事象にとどまるかもしれないけど、自分のコミュニティで感じたものを表現できるのは自分だけなので、しんどくなっても向き合うことをやめるでのはなく、アーティストとして発信し続けたい、とセルは語ります。The Slum Studioの創作を通じては、“Why (なぜ)”を問い続けるだけでなく、“How (どうやって)”に意識を転換していくということ心掛けているそうです。Whyを突き詰めるだけは発展性がなく、その問題を乗り越えるためにどうすれば一歩を踏み出せるのかの方が大切。そこで、Howの議論にフォーカスをシフトすると、人々がコミュニケーションに入ってきやすくなり、会話が生まれやすくなります。そうすると、色々な人を巻き込んで、共に新しい一歩を生み出すことにも繋がります。
対談視聴者の1人としては、The Slum Studioのアートを通じて“古着の不都合な真実”を知ったことで、今後、服を買う際は将来のことを考え少しでも環境がよくなるような行動をしたいと思い至りました。そして、服が届くまでの繋がり、人との繋がりを忘れずに生活したいと感じました。
オンラインイベント録画
イベントに参加くださった皆様、開催に当たってご協力くださいました皆様ありがとうございました。
今後も2〜3ヶ月に一度のペースでアフリカ協会様の企画として本イベントを開催してまいります。次回イベントについても詳細決まり次第ご案内させていただきます。ライブ配信は、アフリカ協会公式Facebookにて配信いたしますので、ぜひフォローください。
(記事執筆:インターン 北舛奏)
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