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アフリカ協会主催 オンライン対談シリーズ Proudly from Africa〜アフリカのロールモデルの話を聞く〜第2回
2021年6月24日(木)20:00~21:00 、アフリカ協会Facebook公式アカウント(https://www.facebook.com/africasociety.or.jp)にて、“アフリカファッションの未来”について話を聞くオンライン対談イベントを開催しました。
ナイジェリア出身のアフリカファッションのエキスパート Arieta Mujay Bärg。彼女は15年以上に亘ってアフリカ各国を巡り、ファッション業界の動向を追い続けてきました。今年彼女が発表したドキュメンタリー”Fashion in Africa”の予告編(https://youtu.be/9Y0ai-9GG1E)で言及されている”Fashion waste(古着や衣類廃棄物)”とアフリカのファッション業界の成長の関係について、詳しくお話を伺いました。
登壇者
【ドキュメンタリーFashion in Africa制作/ クリエイティブコンサルタント】Arieta Mujay Bärg(アリエタ)
【ナビゲーター兼通訳】株式会社SKYAH/ Proudly from Africa代表 原ゆかり
【テクニカルサポート】志賀真希
アリエタについて
彼女はナイジェリア人の両親の元に生まれましたが、幼少期のほとんどをイギリスで過ごします。イギリスのファッションブランド各社で活躍し、『River Island』では広報部長を長く務めていましたが、アフリカのファッションに特化した発信をしていきたい想いから独立しました。近年、リアーナがアフリカファッションを身にまとった姿が注目されましたが、それを働きかけたのも彼女です。
Fashion waste(古着・衣料廃棄物)について
「アフリカには年間20億の古着が欧米やタイなどから流入しています。実はこれは植民時代から続いていることで、今に始まったことではありません。」
「もともとアフリカにある、布を自分で買ってきて服を仕立てるという文化が古着の流入によって薄れ、ファッション産業の発展を阻害してきたという現実があります。」
「チャリティーショップなどで服を寄付することは悪いことではないけれど、それがアフリカの中の55もある国の中のどこにされているのかということをよく考えてほしい、アフリカ人がみんな裸で歩いている訳でもないし、木の下に暮らしているわけでもない、このようなアフリカへのねじ曲げられた印象が世界を一人歩きしています。」
「古着の流入を止めるためには、適切な関税をかけることが重要です。古着に関税がかかるようになれば、市場の価格破壊が起こらなくなります。すでに入っている古着は(アリエタがコンサルタントとして従事している)『アフリカン・ファッション・ファウンデーション』においてアフリカ全土から4人のデザイナーを選び、それぞれのデザイナーに予算をつけ、古着による洋服のコレクションをつくるという取り組みを行っています。」
「アフリカに流入する古着が産業発展を阻害してきたことは確かですが、最近の若手のクリエイティブ達は、古着すら資源と捉え製作に活かしています。アフリカの人々は元来ものを大事に価値を高めていくことに慣れています。」
「ファストファッションは人々が必要としている以上の服を生産しており、これがアフリカに流入してきています。肌に優しいと言われるオーガニックコットンも含めそれがどのようにつくられていて、人々や環境にどのような影響を及ぼしているかを考えてこれから買い物をしてほしいと思います。」
アフリカのファッション業界の成長について
「アフリカにおけるファッションといえば、色鮮やかなアフリカンプリントだけが連想されてしまうことがあまりにも多いと感じています。アフリカにおけるファッションはそれだけではありません。実はアフリカンプリントの起源はオランダであり、オランダにあるVliscoという会社がアフリカンプリントの一大企業として地位を得ていますが、その会社を巡っても近年情勢が大きく動いています。」
「アフリカンファッション=アフリカンプリントだけではないことを知ってもらうためにも、実際にアフリカで起こっているファッションが何なのかをドキュメンタリーを通して、発信していきたいと考えています。」
「多くの伝統的なアフリカのテキスタイル(生地)が滅亡しつつあることに危機感を感じていますが、そのなかでアフリカにある多くの布をつかって服をつくる若手デザイナーもでてきています。」
最後に
「ドキュメンタリー第1弾は西アフリカのファッションに光を当てました。北アフリカや南部アフリカについての第2弾、第3弾のドキュメンタリーも作っていく予定です。アフリカで活躍するデザイナーたちがどのような想いで服を作っているのか、生の声を届けたいです。彼らがどのような環境でデザイナーとなり、服を作っているのか知ってほしい。例えば周りに服飾学校がなくてもYouTubeなどで独学で学び、デザイナーとしての地位を確立している人もいます。アフリカの人たちは常にリスクマネジメントをしながら仕事をしているため、たくましくて根性がすわっているひとが多いわ。」
「2020年は新型コロナの影響で世界中が立ち止まりました。BLM(Black Lives Matter)運動をはじめとする分断に対するアクションも数多く起こりました。そんな中でわたし自身も立ち止まり考える時間を経て気づいたのは、欧米やカリビアンに暮らす黒人の声は取り上げられることはあっても、アフリカに生きる黒人の声がまだまだ聞こえてこないということ。黒人と一括りにするのではなく、アフリカの黒人の声を発信することで、固定観念を解きほぐしながら互いに対する理解を一層促進するような機会づくりをしたい、今後制作していくドキュメンタリーは、そういった観点からも彼らの声を届ける場にしていきたいと思っています。」
「アフリカ出身の一人として、次世代・子ども達が、自身のルーツを誇れるような道を切り拓きたいとも思っています。自分の肌の色やアフリカ訛りの英語にも誇りを持って欲しい。堂々とクリエイティブに自分で切り開いていっていいと思ってもらえるような、勇気づけになるようなドキュメンタリーを発信していきたいです」
最後に、「まさか日本の皆さんに、自分が15年追いかけてきたFASION IN AFRICAを見てもらえる日が来ると思わなかったわ。ありがとう。」と涙ながらに感謝を伝えながら、話をしてくれました。
イベント後、アリエタより視聴者の皆様への感謝の気持ちを込め、ドキュメンタリー本編の視聴リンクを共有いただきました。
FASHION SCOUT – “Fashion in Africa”全編
今後作成していく第2弾、第3弾に向けてはクラウドファンディングを立ち上げることも考えているということなので、Proudly from Africaとしても彼女の取り組みに伴走し、共に”Fashion in Africa”の発信を行っていきたいと思います。皆様にも是非ともご一緒いただけますと幸いです。
Q&Aセッション
視聴者の皆様からのご質問にお答えするQ&Aセッションを設けました。アフリカにおけるSDGsの取り組み、日本・日本人としての関わり方、アフリカの課題など、幅広く非常に有意義なお話を伺うことができました。
Q.リサイクルやアップサイクルの考えは、いわゆるSDGsの考えとリンクするものだと思います。国文化や風土が多様である故に、良い考えを普及させるのが難しい、という主旨のご発言がありましたが、例えば、国際的な共通言語になりつつあるSDGsに対するアフリカの方々の受け止めはどのような状況なのでしょうか?また先進諸国からの押し付けかぁ、と言う感じなのか、むしろアフリカがリードすべき考えだ、と思う方が多いのでしょうか?
A.アフリカにおけるSDGsの受け止め方は、どの世代に話すかによって変わってきます。例えば年齢の高い方にそれを話しても「何を言っているの、ずっと前からやっているわ」と返ってくることがありえます。しかし古着に慣れている若い方にとっては、一から学ぶことも多いかもしれません。誰に対して語りかけるかによって異なってくると思います。
Q. ルワンダで服・小物を作って、日本・世界でECで販売できないか、と考えていたのですが、同様の形態がたくさんあると分かりました。現地の方々の仕事を増やすことと、アフリカプリントがカラフルなので、日本人が元気になるというトレードオフで考えていました。今日話を聞いて、日本のような外国から、現地の人の仕事を作るのは難しいでしょうか?
A.まず最初に伝えたいのは、その真っ直ぐな想いからの素晴らしい取組に賛辞を送りたいということ。アフリカは文化や価値の交換・交流にはとっても前向きです。それを伝えた上でお願いしたいのは、外国人として現地に入るときは、フェアであることを大事にし、正当な対価を支払いながら、現地の人たちが誇りに思うような物作りを志向して欲しいということ。また、アフリカンプリントだけではなく、ルワンダでどのような素材が伝統的に流通してきているかも調べて見ると良いと思う。
Q.アフリカの将来をプラスにしていくために私たちが認識しておくべきこと、またアフリカがこれから向かっていくべき方向は?
A.植民地主義は終わったと教わったけれど、実際にはまだ終わっていない構造が残っています。それを直視し、その上でポジティブな将来を切り開いていくために何ができるかを考える必要があります。例えば貿易上のインフラにはまだまだ課題が多く、アフリカ内で貿易をするよりも外国へ送る方が容易なこともあるのが現状です。今年1月に運用が始まったアフリカアフリカ大陸自由貿易協定(AfCFTA: The African Continental Free Trade Agreement)がしっかり実行されれば、状況は改善されると期待を持っています。
同時に、アフリカ人自身のアフリカのファッションやモノへの誇りや愛着育てていくことも重要。年配の人たちに顕著なことですが、“メイド・イン・アフリカ”なんて、きっと品質が良くないんでしょ…と自らに対して劣等感があったり海外志向だったり、アフリカのデザイナーや商品を信頼していない傾向が見られます。若い世代からはこうした抵抗は見られず、自分たちのルーツから生み出されるブランドや商品に対するプライドや愛着が醸成されているように感じます。そこを伸ばして行きながら未来を志向していくことも、アフリカに求められる姿勢だと思います。
オンラインイベント録画
イベントに参加くださった皆様、開催に当たってご協力くださいました皆様ありがとうございました。
今後も2ヶ月に一度のペースでアフリカ協会様の企画として本イベントを開催してまいります。次回イベントについても詳細決まり次第ご案内させていただきます。ライブ配信は、アフリカ協会公式Facebookにて配信いたしますので、ぜひフォローください。
(記事執筆:インターン 茂木幸乃)
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