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アフリカンプリントのStory Behind(前編)
マーケットでお気に入りの布を探し、その布を仕立て屋に持って行ってデザインを相談し、自分の体にフィットした洋服を仕立ててもらうーアフリカ各国ではこのような光景が日常的に見られます。特別なドレスでなくても、切りっぱなしの布を腰に巻きつけてスカートにしたり、子どものオムツにしたり、人々の生活と布は密に結びついています。そしてそんな色鮮やかな布は、近年日本でも注目を集め始めています。
様々な種類のアフリカの布
一言にアフリカの布といっても、様々な種類があります。色鮮やかなコットンだけをとってみても、西のワックスプリント(※1)やファンシープリント(※2)と、東のカンガではその成り立ち背景にも、デザインの特徴にも違いがあります。
今回は、“Proudly from Africa(プラウドリー・フロム・アフリカ)”のブランドの中でも扱いのある西アフリカのアフリカンプリント(※3)についてご紹介したいと思います。
アフリカンプリント誕生の背景
アフリカンプリントの歴史は、19世紀後期、工業革命と植民地主義の時代に遡ると言われています。
当時、現在のインドネシアとアフリカに勢力を拡大していたオランダの商人が、インドネシア地場の手染めのバティックの模倣品を大量生産すれば商機があるのではないかと考え、オランダで生産したワックスプリントを持ち込みました。しかしインドネシアでは、人々が地元の手工業製品の方を好み、またインドネシア政府が国内のバティック産業の保護のために規制に乗り出したことも影響し、市場を開拓することが叶いませんでした。
そこで、インドネシアで売り切ることのできなかったワックスプリントを船に積み直し、オランダに戻る航海の途中、給油や食料補給のために立ち寄ったゴールドコースト(現在のガーナ)の港でワックスプリントを販売してみることにしたのです。これが、想定外の大ブームを巻き起こします。他にも諸説ありますが、この説明が、アフリカにオランダ製のワックスプリントが上陸した初めての瞬間として有力であると言われています。
色鮮やかなワックスプリントは、たちまち人気となり、地位や富の象徴としてもてはやされる存在になり、1950年代までには西アフリカ〜中央アフリカ全域で流通するようになりました。
オランダ製アフリカンプリントブランド”VLISCO”
今日、ワックスプリントの中でも特に有名なブランド“VLISCO”は、オランダ商人Van Vlissingersが1846年に生産を開始したもので、現在に至るまで全てのデザイン・生産管理がオランダで行われています。アフリカに輸入されたVLISCOを身にまとうことは、ロレックスやルイ・ヴィトンを身に着けるように、富の象徴とされています。
About VLISCO
https://www.vlisco.com/about/about-vlisco/
当初ワックスプリントのパターンは、インドネシアのバティックの影響を色濃く受けたデザインが主流でした。今でも鳳凰をはじめアジアっぽいデザインが見られるのはその名残です。1950年代前後からは、アフリカの人々の嗜好にあったデザインやモチーフ、有名な政治家や国家元首のイラスト、メッセージを伝えるための工夫が盛り込まれるようになります。柄に込められた意味も、人々の文化、歴史、暮らしに密接に結びついており非常に面白いですが、それはまた別の機会に。
メイド・イン・アフリカのアフリカンプリント
1960年代、独立戦争の時代に突入すると、ワックスプリントやファンシープリントをアフリカで内製化しようという動きに高まりがみられるようになります。
ワックスプリントを生産するTex Styles Ghana Limited (TSG)社のブランドであるGTP、Uniwax、Woodinなどがその代表格ですが、今日、GTP、Uniwax、Woodinは100%VLISCOの子会社化しており、さらに2010年、VLISCOはイギリスの投資会社Actisが買収しました。
ここ数年ワックスプリントが急速に国際社会の注目を集めるようになった背景には、ActisによるVLISCOへの資本投入と経営参画が大きく影響しているように感じられます。アジア各国から多くの模造品が流入し、価格競争の時代に入ったアフリカンプリント業界の中で、VLISCOをいち布メーカーから脱却させ、ハイブランドへ昇華させるべく、有名デザイナーやブランドとのコラボを進め、ワックスプリントが、パリやNYなどのコレクションに採用されるように仕掛けました。その結果、VLISCOの売り上げは2010−12年にはV字回復し、利益50%増の顕著な成果を上げています。
今年、モロッコにて開催されたクリスチャン・ディオールのショーでも、コートジボワールで生産されるVLISCO傘下のUniwaxのワックスプリントが取り入れられ、話題となりました。
DIOR MAG
https://www.dior.com/diormag/en_ch/article/100-wax
アフリカの人々の日常生活にとどまらず、世界中の人々を魅了しているアフリカンプリント。日本でもさまざなブランドが立ち上がり、大手メーカーの夏のコレクションでも色鮮やかな生地が取り入れられているのを見かけるようになりました。
※1 ワックスプリント:インドネシアのバティックを模してオランダで大量生産が始まり、西アフリカ中心に製造が広がった布。現在もろうけつ染めの技術をもって小規模生産されるワックスプリントも存在しますが、今日西アフリカで大量生産されるワックスプリントの多くは機械プリントに変容を遂げています。なるべくろうけつ染めの特徴を維持するために、裏表どちらから見ても鮮明に柄が出るようにプリントされています。
※2 ファンシープリント:より効率的にアフリカンプリントを大量生産するために考案されたのが、片面のみにプリントを施すファンシープリント。ロータリープリント、スクリーンプリントなどプリント技法は様々。
※3 アフリカンプリント:「アフリカンプリントのStory Behind (前編&後編)」では、西アフリカを起源とするワックスプリント、ファンシープリントを総称してアフリカンプリントと呼んでいます。
− アフリカンプリントのStory Behind(後編)につづく
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お問い合わせ先:[email protected]
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